吸着力だけでは、本当に安定する入れ歯は作れない
「総入れ歯がすぐに外れてしまう」
「食事中にズレて痛い」
こうしたお悩みを抱えている方は多くいらっしゃいます。
外れにくい入れ歯を作るために重要なのは、単に「吸着力を高めること」ではありません。
当院が40年以上の入れ歯作りで確信しているのは、「噛み合わせの精密な計測」こそが、外れにくい入れ歯の最大の秘訣だということです。

総入れ歯はなぜ外れないのか?
総入れ歯が吸着する仕組み
総入れ歯は、歯茎と入れ歯の間に存在する唾液の表面張力と、空気を排除することで生まれる陰圧(吸盤効果)によって吸着しています。
上顎の総入れ歯は、口蓋(上顎)全体を広く覆うことができるため、吸着面積が大きく、比較的安定しやすい構造です。
上顎は頭蓋骨に固定されているため、入れ歯自体が動くことはほとんどありません。
一方、下顎の総入れ歯は馬蹄形(U字型)で吸着面積が限られるうえ、舌の動きの影響も受けるため、上顎に比べて安定させることが難しいとされています。
吸着力が強ければ良いわけではない
「吸着義歯」という言葉を耳にされたことがある方も多いかもしれません。
しかし、吸着力が強ければ良いというわけではありません。
吸盤効果が強すぎると、締め付け感が出てしまい、長時間の装着が不快になることがあります。
車のハンドルに「遊び」があるように、入れ歯にもある程度の余裕が必要です。
当院では、患者様の感覚やライフスタイルなども考慮しながら、吸着の強さを調整しています。
外れにくさの本当の鍵は「噛み合わせ」
では、外れにくい入れ歯を作るために最も重要なことは何でしょうか?
それは「噛み合わせの精密な計測」です。
上下の入れ歯の噛み合わせが正確でないと、噛むたびに入れ歯がズレたり、外れやすくなったりします。
特に下顎の入れ歯の計測が不十分だと、本来安定しやすいはずの上顎の入れ歯まで一緒に揺れてしまうことがあります。
総入れ歯が外れやすくなる原因
噛み合わせの計測が不十分
入れ歯が外れやすくなる最も大きな原因は、作製時の噛み合わせの計測が不十分であることです。
簡易的な計測だけで作製された入れ歯は、装着直後は問題なくても、使っているうちに外れやすくなることがあります。
当院では「ゴシックアーチ」という計測方法を用いて、下顎が左右・前後に動く際の軌跡まで記録して、より精密な噛み合わせを実現しています。

顎の骨が痩せてきた
長年入れ歯を使用していると、顎の骨(顎堤)が少しずつ痩せてきます。
骨が痩せると入れ歯との間に隙間ができて、吸着力が低下して外れやすくなります。
特に、合わない入れ歯を無理に使い続けると、骨の吸収が早まることがあります。

入れ歯安定剤の長期使用
入れ歯が外れやすいからといって、安定剤に頼り続けることはおすすめしません。
安定剤はドラッグストアなどで手軽に入手できますが、長期間使用し続けると、かえって歯茎が痩せてしまい、入れ歯がさらに合わなくなることがあります。
当院では「良い入れ歯には安定剤は必要ない」と考えています。
安定剤を使わないとしっかり噛めない入れ歯は、何か問題があると考えていただいて良いでしょう。

ご自身でできる「入れ歯チェック」
ご自身で簡単にできる入れ歯のチェック方法があります。
上下の入れ歯を噛み合わせた状態で、下顎を左右にゆっくり動かしてみてください。
この時、上顎の入れ歯がカタカタと動くようであれば、噛み合わせの計測が不十分な可能性があります。
本来、上顎の入れ歯は頭蓋骨に固定された上顎骨に吸着しているため、下顎を動かしても揺れないはずだからです。

ご自宅でできるケアとその限界
正しいお手入れで吸着力を維持
入れ歯の吸着力を維持するためには、毎日の正しいお手入れが大切です。
入れ歯に汚れや歯垢(プラーク)が付着していると、歯茎との密着が悪くなり、外れやすくなります。
当院では、つけ置きタイプの洗浄剤ではなく、泡状の洗浄剤を入れ歯に直接つけて5分ほど置き、洗い流す方法をおすすめしています。
ご自宅でのケアには限界が
ただし、ご自宅でのケアだけでは限界があります。
噛み合わせのズレや顎の骨の変化は、ご自身では対処できません。
「外れやすくなった」「以前より噛みにくくなった」と感じたら、我慢して使い続けずにお早めにご相談ください。
外れない総入れ歯を実現する治療法と相談のタイミング
当院が実施する「ゴシックアーチ」による精密計測
当院では、総入れ歯を作製する際に「ゴシックアーチ」という計測方法を100%実施しています。
これは、上下の噛み合わせの高さだけでなく、下顎が左右・前後に動く際の軌跡を「描記針」という器具で記録する方法です。
この計測結果をもとに人工歯を配列することで、どの方向に顎を動かしても安定する入れ歯を作ることが可能になります。

定期メンテナンスの重要性
外れにくい入れ歯を長く使い続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
痛みがなくても、噛み合わせは少しずつ変化していきます。
当院では3ヶ月から半年に1回程度の定期メンテナンスをお願いしています。「問題がないから大丈夫」と2年、3年と放置してしまうと、入れ歯が突然割れてしまうこともあります。
定期メンテナンスに通っていただいている方は、保険の入れ歯でも10年以上お使いいただけているケースが少なくありません。

相談のタイミング
以下のような症状がある場合は、お早めにご相談ください。
- 入れ歯が外れやすくなった
- 食事中に入れ歯がズレる
- 上下の入れ歯を噛み合わせて横に動かすと、上の入れ歯がカタカタする
- 安定剤を使わないと安定しない
- 何度調整しても改善しない
入れ歯の不具合は、早めに対処することで調整だけで改善できるケースも多くあります。
反対に、放置すると作り直しが必要になることもありますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。






